スピリット・オブ・アートセラピー4

 

 プラットでの授業風景

 

プラットのアートセラピーの学科(正式には“クリエイティブ・アーツ・セラピー学科”)では、学科長は女性であったが、学科全体は古くからのボス的存在だったアーサー・ロビンズ教授(Ed.D)を頂点に、講師陣はファミリーのようなつながりを持っていた。

 

カリキュラムはロビンズ教授が1年次(9月から翌年5月まで)、2年次の4セミスター(セミスターは秋学期と春学期とに分かれ、それぞれ15週間から成る)に渡って中心となる授業を担当。その他の授業はさまざまな講師陣によって、グループアートセラピー、ファミリーアートセラピー、発達心理学、等々盛りだくさんであった。

 

理論的立場は、科全体ではロビンズ教授の精神分析に基づいた対象関係論を基礎にしているが、ゲシュタルト療法派、ユング派など理論的背景も異なる人たちもぶつかり合うこともなく共存していた。

 

そのほか、素材を体験する授業や、アートのアセスメント(査定)など幾つかのコースがあり、それらはアメリカ・アートセラピー協会(AATA)によって認定したアートセラピーの大学院での単位として明確に規定されているものであった。

 

 

授業に参加している学生の数は、授業によっても異なるが、大体十数名といったところ。

そこには海外からの留学生も何人か混じっていた。

 

参加者の年齢は、正確に調べたわけではないが、ざっと見たところ、平均して30代の前半といったところか。

 

日本の大学院に多く見られるような、学部の学生がそのまま大学院に上がるというケースは、ここではほとんど見られなかった。学生たちのには、すでに何らかの臨床の場で働いている人が多くみられた。

 

卒業までに要求される単位数は50数単位。これにはインターン実習は含まれなかった記憶がある

 

私にとって一番の収穫はセミスター(半期)ごとにロビンズ教授に提出したレポートだった。

それは私のインターン実習での体験をもとにして思索したもので、ロビンズ教授も気に入っていたようで、毎回帰ってきたレポートの上に書かれたコメントには勇気づけられた。またロビンズ教授の授業は2年間通して必修で、アートセラピーの核となる授業であった。

 

その他の授業で印象的だったのは、ナンバー2のエレーヌ・ラップによるファミリー・アートセラピーである。彼女は彫刻家であると同時にゲシュタルト・アートセラピストであり、彼女が授業で導入した共同画のワークは、非常にパワーフルなものであった。

 

一度、彼女が授業を休まねばならない時があり、代行として彼女の友人のNYU (ニューヨーク大学)のミュージックセラピスト、デヴィッド・ゴンザレスが授業を受け持った。パーカッションを抱えてやってきた彼のリードによるミュージックセラピーは非常にパワーフルで、今でも忘れられない。

 

もう一つ、アートセラピストになるために必須の授業は、「発達心理学」の授業である。

それは、ジュディー(Ed.D)が担当していた。

前期、後期の2つの学期(セミスター)のそれぞれの授業前に渡されたのは、電話帳くらいの分厚いコピー資料であった。そしてそれ以外に要求された文献が10冊ほどあった。

 

この授業は、私がアートセラピーを学ぶ上での理論的核となっている。

 

相性が合わなかったのが、学科長のレズリー・アブラムのグループ・アートセラピーであった。

そこではさまざまな対象者へのグループ・アートセラピーのリードが学生一人ずつに割り当てられ、クラスからその対象者を募りロールプレイをしていくという内容だった。

 

私に割り当てられたものは、当時死の病として恐れられていた、エイズ患者へのグループ・アートセラピーだった。詳しい内容は忘れてしまったが、一本のろうそくを描き、そこから光を放射させ、それを目の前に置き,自分自身を感じ、全員輪を作って瞑想していくというものだったような記憶がある。

レズリーのコメントはシビアなものであった。

 

「こんなのはグループじゃあない」

 

私は、「この人たちは、集団で死んでいくんですか?」と反論が込み上げてきたが、口には出さず押し黙っていた。

 

授業後、クラスメートのアン(彼女はオーラが見える人だった)が近づいてきて、「Norio!素晴らしいワークだったわ!!」と絶賛してくれた。

 

この時の体験が、私にグループ・アートセラピーへのこだわりに火をつけた。

 

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コメント: 1
  • #1

    新美 惠子(野田) (日曜日, 12 6月 2022 16:32)

    アートセラピーのお仕事、素晴らしいですね。感動しました。
    今、私は99歳の母を見送り、仕事もリタイアして、原発反対の運動に
    少しずつですが、関わっています。
    再生エネルギーの問題とか、先日、オールソフィアンの集いに行って、
    洋上風力発電の講演を聞いてきました。大学もすっかり変わっていました。